kishiro episode-03

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「もうやめっか、キシロ」
 スマホ越しにその声を聞いた瞬間、血の気が引いた。体の奥から末端にかけて血流が熱くぞわっと抜けていくような感覚。目の前がクラクラするような気持ちの悪さ。滅多にかけてこない奥寺からの着信に妙な予感はしていた。
「やめるって…何を?」
 ベッドから起き上がり、俺はスマホを持ち直して問い返した。
「キシロと俺との…関係。もう別れた方がいいかなって。」
 別れる?別れる以前に俺たちの関係は付き合ってたって言えるのか?そう口をつきそうになって飲み込んだ。夜も更け日付が変わろうという時間、俺はどうしても奥寺の言葉を受け入れられない。
「…俺とやんの飽きた?」
「飽きてないよ、キシロとするの好きだし」
「じゃあなんでだよ?」
「なんでかなー、なんで俺たち付き合ってるんだろうなぁ、はぁ〜」
 質問に質問で返してきた奥寺は大きなため息をついて黙りこんでしまった。
 奥寺と俺との関係は付き合うなんて可愛いもんじゃない、ただのセフレだ。最初から俺はわかっていた。奥寺にとって俺は気持ちいいことをする共犯者なんだと。
 しかも学校内で、同性同士で、昼間から壁越しに同級生が居るような場所で、恥ずかしげもなく足を開いて互いに咥え込み、果てるまで貪りあう。奥寺はこれ以上ない背徳感に酔えた事だろう。

 でもそれは俺も同じだ。こうして一年以上体を重ね、相手の感じる場所を知り尽くし、イクタイミングもイかせるタイミングもわかっているのに、俺は飽きることを知らずもっともっと奥寺が欲しかった。
 ずっと二人だけの秘密を共有して、一番気持ちいい瞬間を奥寺とだけ味わっていたかった。奥寺のイク顔は俺だけのもので、俺がイク時の顔は奥寺にしか見せたくない。そんな独占欲が生まれたのと同時に不安も抱くようになった。
 きっと飽きられたら終わってしまう。そういう怖さがいつの間にかつきまとうようになって、その辺りから俺は奥寺を意識していたんだと思う。

「一昨日のさ、キシロ」
「ん?」
「顔射の…あれ…さ」
「んぁー、ああ」
「顔に…かけなくて、ごめん」
「はぁー?」
 やっと口を開いたと思えば、予想外の謝罪で驚いた。あの日は自分もイかせてもらった後、ほとんど口をきかず正門が閉まる時間になって、と言っても普段からセックス以外に大した会話もしないのだけれど、いつも以上に荒んだ雰囲気で別れた。ここにきてその話題が出るとは、思い出せば顔射をせがんだ事が今になって恥ずかしい。
「…奥寺それ謝るとこか?」
「ん…つか、なーんか、気に入らなかったんだよね」
 奥寺は俺の問いかけを無視して語りだした。
「一方的で、お互いフェアだったはずなのにいつの間にかやる度に背負うものが大きくなってる気がして…」
「は?」
 主語が無くて奥寺が何を言いたいのかわからない。そのまま解釈すれば、どちらかが嫌な想いをしているという事だろう。少なくとも俺は嫌な想いなんかしていない。が、奥寺はなにか勘違いしているかもしれない。どっちが?と声にする前に奥寺が続けた。
「顔射されたいって、どういう気持ち?」
「…え…どういうって………」
 支配されたい、汚されたい、所有物にされたい、マーキングされたい、何より奥寺に飽きられたくない。整理するとそうなるのか、と気がついて俺は咄嗟に誤魔化した。
「その方が…興奮するかなって…奥寺が」
「俺が?」
「あー、うん、ぶっかけるのって気分良さそうじゃん?」
「ふぅん」
 納得いかないような返事のあと、少し間を置いて奥寺が問いかけてきた。
「キシロって俺の事好き?」
「は?」
 再び体中の血流が大きく波打つ。心臓の音が漫画のようにドキンと聞こえたような気がした。
「好きって言えば…好きかな、嫌いな相手とは…できねぇし」
「性的に?」
「はぁああ?」
 思わず変な声が出たけれど、奥寺は気にせず続けた。
「キシロは俺の事、性的に好き?」
「性的っつーか……奥寺とセックスすんのは好き」
「じゃあ性的に好きって事か」
「いや、待てよ、ああ、うん、ていうか…」
 言葉に詰まって、そのまま俺は黙り込んだ。とりあえずテーブルの上の煙草に手を伸ばし、一本く
わえてジッポを手に取る。
「煙草、消せよ」
 火を付けた瞬間、奥寺が反応した。
「いいじゃん、自宅でぐらい好きに吸わせろって」
「真剣な話ししてるんだし…」
「性的にって奥寺の質問の…何処が真剣なんだよ」
「だから…こういうのが、嫌なんだわ」
「は?」
「一方的だって気付かされるのがさ…」
 その言葉でやっと先程の”フェアと感じず何か気負いしている”のは奥寺の方なのか、と理解した。それならば誤解を解いてやりたい。自分も同じように奥寺を欲していると。
「別に一方的じゃねーよ?俺だって奥寺とセックスすんの楽しいし」
「いやそういう意味じゃない」
「そういう意味じゃないならどういう事だよ?」
「ああああーもう、はぁ〜」
 唸るような声を出した後、奥寺は再び大きなため息を付いた。それからすぐスマホの向こうからドアを開け閉めする音の後にベッドに寝転がるような音がガサガサと聞こえた。
「なにやってんだよ?奥寺」
「ああ、うん、煙草吸い終わった?」
「吸い終わったけど」
 そう言いながら俺は灰皿に吸い殻を押し付けた。
「じゃあ、さ、目閉じて、キシロ」
「………なんで?」
「いいから、目を閉じろって」
「……ん、ああ、わかった、閉じた」
 奥寺の唐突な指示に、期待と不安が入り混じって胸が痛む。俺は素直に横になって目を閉じた。
「これから俺が言う事を想像…して欲しいんだけど」
「何を?」
「いいからしばらく黙って聞けって」
「ああ、うん」
 鼓動が次第に早くなる。不安は消えて淡い期待でいっぱいに満たされていた。ここで裏切られたくはない。
「キシロ、耳舐められるの、好きだろ?」
「ん、あー、うん」
「右耳をぺろって」
「……ん」
「ぺろぺろ…ちゅぱちゅぱ、俺が舐めてるとこ…思い出してよ」
 その言葉だけで右側の耳が熱く火照りはじめた。耳元で水音が響いて、奥寺の柔らかい舌に耳を舐められる感触が蘇る。耳の形通りにゆっくりとなぞられ、中心をくすぐるようにたどったあと、奥寺は耳たぶを口に含んで甘咬みする。
「…ぁあ」
 声が漏れて一瞬我に返った。ついさっきまで別れ話をしていたはずなのに、どうしてこんな事になったんだろうと。
「そのまま、首筋からゆっくり鎖骨も舐めるよ、ちゅぷ…ぺろ…」
「ぁっぁ…あ」
 ビクンと体が反応して背中が反り返った。いつもなら奥寺の背中に両手を回し、舌が動く度に指先を立てて気持ち良さを訴える。でも今日の奥寺は電話の向こうだ。虚しく宙から両手をおろして右手でシーツを掴んだ。
「キシロ…」
「…ん?」
「そのまま、シャツの上からでいいからさ…乳首触れる?」
「え、あ、ああ…うん」
 言われたとおり、シャツの上から右手で乳首にそっと触れた。
「んぁ…ふぁああ」
 さっきよりも大きく体がビクンと跳ねた。その部分は硬く、まるでボタンでもついているかのようにシャツが盛り上がっていて、触れるだけで下半身がせつなくなる。
「いい声、キシロ」
「…うっ…せぇ…」
「俺がいつもやるみたいに、ゆっくり指先でなぞって、少しずつ、先端は触んなよ」
「……わかってる」
 奥寺はいつもしつこいぐらい丁寧に乳首を愛撫する。元々俺は乳首をいじられてもあまり感じない方だったのに、この一年ですっかりあいつに開発されてしまった。
「キシロのすぐ硬くなるからなぁ…」
「…っ…あ…ぁ」
 その言葉の通り乳輪をゆっくり指でさするだけで先端まで硬くなっているのがわかって辛かった。
「乳首の先端はまだ触ってない?」
「…ん、うん…」
「じゃあシャツめくって、俺が舐めるのイメージして…」
「…ぇ」
 シャツをめくると、厭らしく勃起している乳首が見えた。羞恥心は勿論、男としてここまで乳首が感じる事が情けなく、恥ずかしかった。
「…キシロ…舐める…よ…じゅる…ちゅる…んっれろ…れろ…れろ…ぺろ…ちゅぷ…」
「ぁあ、あっあああああ…んぁ…おく…で…らあああ…」
 熱く柔らかい奥寺の舌が乳首に触れるのを思い出しながら、俺は指先で乳首を擦った。強く乳首の先端を刺激しながら何度も何度も奥寺の名前を呼んだ。
「…やっべ…我慢出来ない…キシロ、俺も扱いていい?」
 奥寺のせつない声と衣擦れの音が電話の向こうから聞こえる。
「…ん、ああ、うん…」
「じゃあ…しゃぶって…キシロ…」
 指示通り俺は奥寺の事を思い出しながら、しゃぶるように水音をたてた。口元からつたう唾液を気にせずいつものように一心に奥寺のものを味わった。まるでそこに奥寺がいるかのように興奮して、堪らなかった。
「…はぁ…はぁ…ストップ…あ…やばい」
「奥寺…ぁ…いきそ?」
「ん、キシロ、擦り合いながらイカセていい?」
「ぁ…ああ…ん…」
 勃起した状態で奥寺に強く握られると、頭が真っ白になる。あの時の支配されるような感覚は忘れられない。自由を奪われて屈するのと同時に生まれる喜びを俺は知っていた。
「あ…ぁ…キシロ…いく…ぁあ…あ…」
 激しい息遣いと擦れる度に聞こえる卑猥な音。奥寺のものと俺のものがまとめて同時に強く扱かれる時、俺はいつも泣きそうになる。気持よくて、奥寺にぶら下がるようにもたれて、頭がおかしくなりそうになる。あの感覚に浸りながら、俺は必死に右手で勃起した自分のものをしごいた。
「ぁ…奥…寺…いく…出る…出る出る…いく…ぁあ…あ」
「ん……俺も…っ…んんんっん…う…んっ」
 扱くのを早め足を大きく開き、腰をガクガクと震わせ俺は果てた。同時に電話の向こうでも奥寺の果てた声と息遣いが聞こえる。その声が嬉しくてたまらない。右手の動きに合わせ勢い良く熱い精液が飛び出す。
「ぁあ…あ…っんああああ」
 このまま奥寺に堕ちていきたい。射精する度いつもそう思っていた。独占したくて、支配されたくて、”性的に”なんて言葉は置いておいて、奥寺とどこまでもどこまでも深いところに沈んでいきたい感覚があった。

No.4へ続く

柏葉が書けば書くほどに女々しくなり、不良という設定が大変迷子。
奥寺は別れようといったりてれほんせっくすを要求したり最終的に今回もただの変態。